【千葉県の放置竹林から製作した高性能竹炭で地域固有の汚染水問題を解決する】
様々な自治体で問題視される放置竹林は、適切な管理だけでなく竹そのものについての有効活用法が求められています。また日本国内には地域固有の水環境汚染問題が多く存在しており、それらの問題を解決する新たな水処理素材や水処理技術が求められています。そこでこの研究では、様々な条件で竹炭を製作し、それらの水質浄化剤としての適用可能性を検証することを目的とします。
本研究では主に、(1) 竹炭の最適条件探索と (2) 竹炭の水質浄化性能評価 の2つの視点で研究活動を進めています。
千葉県佐倉市小竹町に存在する放置竹林から孟宗竹を採取し、竹炭の原料として使用しました。また竹炭を製作するための電気炉は、不活性ガス流通や減圧状態での炭化が可能な電気炉を選定し、本助成金によって購入しました。この電気炉を用いて製作した竹炭は、さらに水酸化カリウム(KOH)を用いた化学的賦活処理を行っています。このとき炭素分(C)とKOHの比率を変えながら竹炭を賦活させました。賦活後の竹炭はイオン交換水を用いて洗浄し、窒素吸着法によって得られる吸着等温線を解析することでBET比表面積を算出しています(Table1)。
Table1 これまでに検討した竹炭製造条件の一例
| Sample No. |
炭化条件 | 賦活条件 | C/KOH比 | BET比表面積 [m2/g] |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 窒素流通 | 窒素流通 | 1:1 | 10 |
| 2 | 1:2 | 463 | ||
| 3 | 1:3 | 654 | ||
| 4 | 1:4 | 1259 | ||
| 5 | 減圧状態 | 減圧状態 | 1:1 | 127 |
| 6 | 1:2 | 634 | ||
| 7 | 1:3 | 809 | ||
| 8 | 1:4 | 1081 |
上記のようにこれまでの検討では、KOHの量を増やして賦活するほど高い比表面積を有する竹炭が得られることが確認できています。これは竹炭のグラファイト層間にカリウムイオンがインターカレーションすることで比表面積が向上するためと考えられます。今後はこのような製造条件で得られた竹炭の水中吸着特性評価(医薬・農薬・有機フッ素化合物(PFAS)・重金属イオンなどを想定)を実施し、得られる材料物性との関係を解析的に明らかにしていく予定です。
竹炭の水質浄化性能評価に向けて実際の現場を知るため、様々な水汚染問題が生じている地域に出向き、現地での水質調査や有識者との意見交換を実施しました。例えば北海道では、休廃止鉱山や温泉地域における環境水をパックテストで簡易分析し、酸性で金属イオンを多く含むエリアが存在していることを確認しています。また沖縄県では研究室の学生と共に北谷浄水場及び海水淡水化センターを見学し、周辺地域で問題となっているPFASの現状に関する情報を収集し、吸着処理に用いられる活性炭やその使用方法に関する意見交換を実施しました(Fig.1)。
〇化学工学会八戸大会(2025年11月@青森県八戸市)
医薬・農薬吸着剤を想定した竹炭の最適製造条件の探索
山形大貴・安立美奈子・今野大輝
〇炭素材料学会年会(2025年11月@長野県長野市)
医薬・農薬・PFASに対する吸着剤を想定した竹炭の最適な製造条件探索
山形大貴・安立美奈子・今野大輝